学童事業スタートのきっかけは、ベネッセの保育園を卒園した保護者の方からのお声でした。保育園の時はこどもを安心して預けることができたのに、小学校に上がると預けるところが少なく、仕事を辞めたり、セーブしたりしなければならない。ぜひ、ベネッセで学童クラブをやってほしい。うれしいと思うと同時に、これが数年前から叫ばれている保護者にとっての小1の壁なのだと思いました。保育園がたくさん整備されていく中、今後ますます保護者の方のニーズの高まりが予想されます。信頼をしてベネッセの保育園に預けてくださった保護者の方々のお声にこたえていきたい、そして保育事業の原点である、自分のこどもを預けたいと思える学童クラブをつくりたい、という思いで2014年9月、1号施設をオープンしました。
ベネッセの学童クラブでは、“生涯に渡って学び続ける力”の基盤になる、『学びに向かう力』を育むことを大切にしています。学びに向かう力をつけていくには、毎日の習慣がとても重要と言われています。
学校から帰ってきたら、お帰りなさいと迎えてくれる大人がいて、ランドセルを置いて、手を洗って、宿題を終えたらおやつがある毎日。普通に感じる習慣ですが、習慣がついていくには、大人のかかわりが大きく影響します。こどもが自ら能動的に、楽しみながら習慣(リズム)をつくりだせるように、スタッフはこどもたちとかかわっていきます。
こどもは、リズムがついてくると、学びや遊びの取り組みも意欲的になっていきます。
ベネッセの学童クラブでは、こどもたちの興味関心の幅を広げる、さまざまな体験を取り入れています。そこには、ベネッセグループだからこそできるコンテンツも導入し、教育面でコラボレーションにも取り組んでいます。
一人ひとりのこどもたちが、それぞれの強みを生かし、ワクワクするような活動ができ、明日も行きたい、と思えるような学童クラブをつくっていきたいと思います。
ベネッセの学童クラブのいくつかは、弊社で運営する老人ホームとの合築であり、連携して運営しています。
日常的にホームの花壇に水やりにいったり、ホームの庭で遊ばせてもらったり、自然に交流を行っています。
梅ジュースづくりを一緒に行った時のこと、こどもたちの多くは初めての梅ジュースづくりです。梅を洗って、ビンにつめ、氷砂糖を入れていく。老人ホームのご入居者様の優しい見守り、こどもたちの楽しそうな声が響きます。よく見ると、こどもがビンに入れようとしてこぼした氷砂糖を集め、そっとビンに入れてくれているご入居者様の姿。温かな光景に、どこか懐かしい気持ちになります。昔はどこにでもあった普通の光景かもしれません。核家族化が進んでいる今、日常のこのなにげないやりとりが、こどもたちの心に優しい思いやりの気持ちを育む時間になっていることを願っています。
こどもたちは、多くの時間を小学校で過ごします。学童クラブは学校の後のこどもたちの居場所です。こどもたちにとって安心して、帰ってこられる居場所でありたいと思います。
宿題ができて、遊べる場所があって、リラックスできるソファもある、こどもたちにとっての“安心基地”です。そしてそこにいる大人たちが温かい受け皿となって、学校で嫌なことがあったらそれに気付きそっと声をかけてくれる。こどもたちの気持ちを受け止め、また明日元気に学校に行こうと思ってお家に帰っていく。そんな温かな空気が流れる、第2のお家のような存在になっていきたいと思います。
“現在の小学1年生の65%は今存在しない職業につくだろう”(*1)と言われており、人間にしかできないと思われていた仕事も次々に機械に代わっていくかもしれません。どんな時代になっても、自信と意欲をもって生きていってほしいという願いをもち、日々こどもたちと関わっていきます。
ベネッセの学童クラブで過ごした時間が、小学生の頃の楽しかった記憶に残っていくことを願い、全力で取り組んでいきます。
*1デューク大学 キャシー・デビッドソン教授 -2011年 ニューヨークタイムズ紙-